アマツカゼ〜覚書(別館ネタばれニッキからお引越し)

【以下、2008年4月7日に別館ネタばれニッキ・ひみつのシアワセの種にUPしたものを、舞台終了に伴い一部加筆&転記したものです】
【自分的な青山劇場での観劇覚書も3月31日のところに転記しました】


凪に逢ってから、一週間。
「もう」のようでもあり「まだ」のようでも、あり。

私の青山劇場での「アマツカゼ」は、終わってしまったのだけど
今日も、明日も、あそこで凪は闘ってるんだなと思うと、ちょっと不思議な気分。



終わってからずっと、忘れないように、眠ってた記憶を揺り起こすみたいに、
何度も何度も思い返してきたけれど、なかなか文章にできなくて。
相変わらず、メモもなしの記憶力3本勝負での覚書なので、「そこ、違うじゃん〜!」なところも多々あるかと^^ヾ
解釈もね、自分が感じたことなので、正解ではないかもしんないけど。
そこらへんは、どうか、ご容赦くださいっっ(最初から土下座)
「違うんじゃね?」と思った方、拍手かコメント、またはメールフォームからこそっと教えてくださいませ(他力本願)
いつもはあくまでも個人の独り言スタンスなんで、
文体も内容も、モロに独り言ベースで書かせていただいてるんだけど、
今回は、ちょっと、「読んでいただく」ことを意識して頑張ってみようかと・・・・あぁでも、「ですます」と「〜だ」が入り混じったりするのは、もう、雰囲気で見過ごしてください、あくまでキモチ重視で走ります^^ヾ


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この作品、「センゴクプー〜戦国風」の主人公・風助が誕生するまでの物語ということなのだけど、「戦国」の劇中の過去回想シーンでは、風助が刀を捨てるきっかけになった事件は、「アマツカゼ」とは違ったエピソードになってます。
でも、根底に流れるメッセージは同じだし、今回、きださんが演じる男って、すごく「風助」なんです。
「あ、こんなこと、風助も言ってた」って、何度も思った。
それって、凪が、虱の精神をまるごと、ちゃんと受け継いで「風助」になったってことだよね。
「戦国」は見てないんだけど大丈夫かな?って今回観劇する智友にメール貰ったんだけど、知らなくても十分にひとつの作品として楽しめると思う。
ただ、台詞や演出で「あ、これって!」って思い当たることがちょこちょこあるから、
智さんの過去の作品を知っていると、密かに「ふふふ^^」って思える“特典”は、あるかも。
そんなこんなを踏まえて、次、本編の覚書、いきます。


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では、記憶にある限りの「アマツカゼ〜天つ風」を・・・・あらすじ+私の感想、ごちゃまぜです。
もーーーーーのすごく、長いです、ごめんなさい.<(_"_)>
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幕が上がると、暗い群青色の照明。
「凪様 ご帰還!」の声と共に、舞台中央の階段状セットの上から逆光シルエットの凪が登場。
階段を下りてくる、その姿だけで近寄りがたいような圧倒的なオーラを纏ってるの。
影村(西ノ園さん)をはじめとする配下の者、そして山城不動(アツヒロ)も続けて登場。
凪、右手を白い三角巾(みたいな、ガーゼっぽい布)で吊って、担いだ刀の先に敵の大将の首の入った包みを結んでる。
険しい顔のまま舞台中央の一番手前でしゃがむ。
もうね、綺麗。
智さんの横顔と後頭部、大好き。
そして、開いた胸元の肌が!真っ白くてキメ細かくてものすごくキレイで・・・。
でもね、たぶん、その瞳に映ってるのは客席じゃない。
凪の、瞳だった。
「信長の軍を、たった一人で片付けたとは真(まこと)か」問う不動、無言の凪。
「不動様が尋ねておられる!」怒る影村を「まぁ、良い、いつものことじゃ」と制して、腕の怪我について訊くと、初めて凪が口を開くの。
「ほんのかすり傷にございます」・・・・初めて訊く凪の声なのに、記憶が曖昧だぁ(><)でも、たぶん、そうだったはず。押し殺したみたいな低い声で、すごく男っぽいの。
「あの軍勢相手に腕一本で済むとはたいしたもの。褒美に、我が妻・りんとの拝謁(はいえつ)を許そう」
ハッと顔をあげる凪、階段上部からりん(星ちゃん)登場。めちゃめちゃ綺麗。
振り返り、りんを見上げる凪。そっと近づく後姿がね、さっきまでとは全然違うの。
後姿と歩き方だけでも雄弁な智さんのお芝居、ほんとにすごい。
りんの傍に立つや否や、りんを退けバッと三角巾を剥ぎ捨てた凪の右手には短刀。そのまま不動に斬りかかり「山城不動、討ち取ったり!」・・・・・・と思いきや、それは影武者。
出てきた本物の不動に取り押さえられる。
「また泣くか?ワシの配下であることを辞めるか?」
不動、圧倒的に優位、憎憎しいまでの余裕。
搾り出すような凪の「辞めぬ・・・辞めませぬ・・・ッ!」キッと睨みつける目に、一瞬、不謹慎にも“うわ、蔑まれたいッ!”と思った私(ドM)
今日の戦の功の褒美に、侍大将に任命される凪。

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さきほどの不動との闘いで負った腕の怪我を庇いながら舞台下手に座っている凪。
上手から陽炎(まりかちゃん)が現れる。
一瞬警戒するも、陽炎だと分かると少しだけ(ほんのすこーしだけ)表情が和らぐ凪。
凪のことを「若」と呼び、怪我に薬草を、滋養にと腰の包みをとかいがいしい陽炎に「誰が見ているかわからぬだろう」と邪険にする凪。
懐から、(おそらく)小判の入った袋を投げてよこし「礼だ。これ持ってさっさと立ち去れ」と背を向ける。
「今日の戦で俺の退路に爆薬を仕掛け、敵を阻んだのはお前だろう、ったく余計なことを・・・・」
私たちの仇である不動がくれた金など受け取れません、と陽炎。
「なぜ若は不動の配下にいるのです!?」
獅子身中の虫だ」と凪。どんな敵も、身内となったほうが崩しやすい。
もう、俺は若でもない、お前の主でもないと拒み「主であると思うなら、主として命じる、俺に構わず自由に生きろ」と言う凪に、自由にしていいのなら、これからも若をお守りします!と返す陽炎。
「・・・・ッ!好きにしろ!」って立ち去る凪がね、やっぱり、陽炎にはちょっぴりだけ違うの。笑顔なんて見せないし苦虫噛み潰したみたいな顔のまんまだけど、心の奥底では違うっていうのが声と眼でわかるの。智さん、すごいなぁって思う。


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残された陽炎。
舞台下手から、笠を被った僧侶がふら〜っと登場、陽炎の上に重なるように行き倒れる。
空腹で死にそうな僧侶(仁雷・武田さんv)に、若にあげるはずだった握り飯と水を、野犬に噛まれた傷に薬草を、しょうがないなぁといったふうに与える陽炎。
その優しさに「あんたは俺の観音様だぁぁーーー!」と惚れちゃった仁雷。
このへんの武田さんの台詞回しと間が最高!
あの声、ずるいよねぇ、ヒトコトしゃべるだけで面白いんだもん。
陽炎の名前を訊ねたときの
「あの、虫の?」手をぱたぱた
「違うわよッ!」
「じゃ、じゃぁ、あのゆらゆらするヤツ?」ってくだりで、
29日にはマチネもソワレも「あの、海面温度と空気の温度の差が原因で起こる〜」ってヌゥベンちゃん(@戦国)みたいな豆知識披露をやってたのが、30日マチネではなくなってた。あれ、好きだったのにな。(追記:千穐楽では、やってたv)
まりかちゃんとのやりとりもハケるときの独白も、笑ったわー^^

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不動の元に、占い師と名乗る老人(きださん)が訪れる。
先のことが見える、という占い師は不動に死相が出ていると告げる。
決して山には近づくな、と忠告する占い師。
「山に月、二つ現れるとき」死が訪れる、そしてそれは“獅子身中の虫”による、と。
このときの智さん、終始表情を殺しているのだけど、獅子身中の虫、と聞いて、ちょっと表情を変えて下手から上手へ、不動を睨みながらゆっくりと移動するの。(後で思い出すとかっこえぇ〜〜)
「山に月二つ。ならば、ワシは死なぬ・・・・・・・何故なら・・・・・・(いきなりトーンが変わる)月は1つじゃ♪」
アツヒロ唯一のお茶目さんな場面。1部より2部、2部より翌日、とどんどん「1つじゃv」のるんるん度がUPしてたよーな^^ヾ
後は、影村との「顔、近いよ」の場面くらいかな、不動がちょっとくだけるのって。
不動が去った後、占い師に話しかける凪。
「いくつだ?干支は?生まれは?」とどんどん攻めていき、押さえつけて「笑ってみろ」と迫る。笑った口元を覗き込み「60(歳)にしては歯が白いな、そして全部残っている」と変装を見破る。
冷静で、非情。凪、めちゃめちゃクール。(何度も言うけど、思い返すたびにカッコイイ)
 
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場面変わって「またまた俺参上」な仁雷。
「お前が凪か!?」と凪に襲い掛かる。
「“凪”というのは、不動が戯れにつけた名前、俺に名はない」
「では質問を変えよう。先月、雷雲寺を襲って皆殺しにしたのはお前か!!?」
お布施を不当に巻き上げて酒と女に明け暮れ、あげく武装した僧侶たちを斬った凪を、
師匠と兄の仇として討ちに来た仁雷。
凪の刀が仁雷の首下近くにピタリと決まる。
「俺が目的を果たしたら、その時は喜んでお前に斬られてやる」。
そこへ陽炎登場。若を逃がし、仁雷と戦う・・・・・が「あれぇ!?観音様!!?}
再会を喜び、初めて女に優しくされて惚れちまった、なんでも言うこときくから夫婦になってくれ!と縋る仁雷。
何でも言うことをきいてくれるならば、金輪際、若の命を狙わぬこと!若に手を出したら、私も死ぬから!・・・・・陽炎の一途な想いがぐっとクるシーン。

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階段の上から、歌いながらりん登場。

みぎのさる さにしめし
いただきすべってふたのあな
かがみにうつるこがねむし
ほとけのひるね(ひぶね?)にあまつかぜふく・・・・・

今は亡き不動の母が歌ってっていた童唄。
りんの歌声を聞くと心が和む(歌う姿は母を思い出す、と千秋楽では加わってた)と微笑む不動。
「外に出たいか?」「・・・・わかりませぬ」
・・・・そうなの。不動はりんのことを大切に想っているようだし、りんだって、まんざらでもなさそうなの。
凪があんなに必死になって助け出そうとしてるわりには、妹はそんなに嫌がってなさそうなのが釈然としないなぁって、ちょっともやもやしちゃうんだよね;;;

そこへ、影村の声。
頼んでいた鉄砲が届いた、とのこと。
これで、織田軍を攻め落とせるとよろこぶ不動。
それに先立って、神ノ岳(かみのたけ〜のたけ、の漢字はわかんないんだけど)を攻略したい、と。
神ノ岳には風神が棲むから近づくなと言われている、とビビる影村に、お前ではなく凪を行かせる、と言い残して去る不動。
「不動様の気まぐれには胃が痛みます」とぼやく影村に「お前はわが軍の要。身を労わらなければ、胃を腐らせてしまうという核の病になってしまいますよ」とりん。
影村が去った後、「神の棲む山・・・・・」と言い残し、りんも退場。


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場面は神ノ岳。深いグリーンの照明と樹木の影で鬱蒼とした森を演出。
あたりに気を配りながら上手から部下を連れて凪が歩いてくる。
「・・・なぜ、俺まで・・・」。なぜか、影村も一緒(笑)
もう、このあたりで切り上げましょうと凪に影村が泣きついていると、どこからともなく不気味な唸り声が・・・・。
唸り声はだんだん近づく。
「殺ぉぉ〜す・・・・」身構える一行。
「殺さなぁ〜い・・・・」コケる一行。凪だけは少しカクッとするだけで、クールな訝しそうな表情。
「殺〜す、殺さな〜い・・・・」森の奥からふらついた足取りの仁雷登場。
凪を殺すべきか迷っていたら、本当に道に迷ってしまったらしい。
まったく相手にしない凪にキレる仁雷。「お前みたいに血も涙もないヤツはやっぱり殺す!」襲い掛かる。
そこに若を守るため陽炎、登場!
仁雷のカンケイを誤解されまいと「違うんです!」と凪に弁解する陽炎に
コイツらは仲間なのか!?と影村に感づかれ、陽炎「しまったぁぁ!」。
その時、突然起こった風と木の葉のかく乱みたいなのに巻きこまれて、風神の祟りか!?と逃げ帰る影村たち。

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残ったのは、凪と陽炎、仁雷。
それが風神の祟りではなく、山の反響(と、ナントカ)を利用した、人の手によるトリックだと見破る凪。
出てきたのは、先般、不動の元に来た“占い師”。
この山は自分の山だから、こうやって“風神の祟り”を装って人を寄せ付けないようにしていたのだという。
「だから、占い師に化けて不動に山に近づくなと言ったのか!?」
俺の道を邪魔するヤツは許さない、と刀を抜く凪。
再び、罠が仕掛けられて牢に閉じ込められる陽炎と仁雷。
「戦なんてしたって、無駄に血を流すだけ。戦をしなければ負けない」という男と
「勝たなければ意味がない」という凪。
「負けないことも大切だ」
「負けるが勝ち、ということか?!」
折り合わぬ問答に斬りかかる凪、避ける男。

「何故、刀を抜かぬ!!?」
「風神のからくりを見破ったのはお前が初めてだ。頭もいいし、腕もたつってか」
互角の攻防の末、ついに凪の一振りが男の首元に!
・・・・と、二人がぐるりと向きを変えると、凪の刀を男が口で咥えている。
「俺は、口がたつ」ニヤリと男。
これ!戦国で嵐山に斬られた風助が同じように口で刀を咥えて「言ったろ?俺は、腕は立たぬが口は立つんだ」ってニヤリと笑うシーンがあるの!風助さぁぁ〜ん!
逃げる男、追う凪。

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岩だらけの山。赤茶けた照明。
ぜぇはぁ言いながら、階段セットの上部から男、そして追いかける凪が登場。
二人とも、疲れ果ててもう限界。倒れこむ。
「何のために戦うのか、お前の進む道の先には、目的を果たしたその先には、何があるんだ?」問いかける男。
登り詰めた先には、この山の頂上みたいに岩ばっかりで何もないんだ、と。
「お前には、見えないのか?」寝転んだまま、天をスッと指差す凪。
「登り詰めた、その先には、大きな空が広がってるんだ」
指差す、その指先が綺麗。そして、筋力だけでスーッと上体を起こす動きが、綺麗。
一瞬、小さく驚いた後で、ふっと息を吐いて愛しさと切なさの混じった声で男が言うの。
「お前、面白いな」。
これね、戦国でも、風助が熱く語る雷蔵に言うの「お前は、いいよ。面白い」って。
その言い方も、表情も同じでね、あぁ、風助さんだーって。
「友達になった記念に・・・・」と夜空に花火を打ち上げる男。
「火薬を使って西洋人は鉄砲を作った。でも同じ火薬を使って、唐人は花火を作った」
人を殺すものと人を楽しませるもの、同じものでも使いようだ、と。

山を降りようとする凪。
「あ!そこらは地盤が悪いから・・・・!」と注意する男の言葉を、「その手には乗らぬ」と受け流してどんどん進むと・・・「本当だって!」と慌てて追いかける男と共に、洞穴に落ちてしまう。

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凪を探して彷徨う陽炎と仁雷。(会場を徘徊〜千穐楽では「若ぁ?」なんてお客さんを覗き込んだりしてた^^)
夜空一面の打ち上げ花火に気付いて、二人並んで立ち止まる。
このとき、二人が私の目の前!
まりかちゃん、かわいいv 武田さん、陽炎をガン見しすぎ。顔、ものっそ近い!近い!(爆)
「キレイ・・・・」「キミの方が・・・」肩に手を回そうとしたした瞬間、肘鉄をキメて
「あの花火の下に若がいるに違いない!」走り去る陽炎。
「もうッ!照れ屋なんだからぁッ///」追いかける仁雷(ま、お約束なんだけど、武田さんがやると、なぜかものすごく面白い♪)


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洞穴の中。重なって倒れている男と凪(きださんがBlogで書いてたシーンは、ここ)。
覚醒し、落ちてきたのか・・・・と周囲を見回す凪の目に留まったもの。
「こ、これはっっ!??」
わ〜!わ〜!っと身体全体で岩肌を隠そうとする男。
「こんなところに、湖が・・・・・」
「あ、そ、そっちね^^ヾ」
もちろん、凪もすぐに、男が隠そうとしていた岩肌一面に煌く黄金に気付く。
神ノ岳は、不動の父が見つけた隠し金山だった。
用心深い不動の父は、金山のことは誰にも言わず、風神の噂を流して人を寄せ付けぬようにしたのだという。
次に凪が気付いたのは、奥の方にある、猿のような顔をした石の彫像。
「それは、仏像だ」
近づき、手を伸ばした凪を男が慌てて制する。
「あんま、そういうものには触れないほうがいい、触れると祟りが起こるからな」
千穐楽では「サル・・・・仏・・・」と凪が呟いてた)

不動の配下である以上、金山のことを報告しないわけにはいかない凪。
そうで、あるならば。
「せっかく友達になったのに、お前をここから帰すわけにはいかなくなっちまったな」
刀を手に(抜かないが)凪に襲い掛かる男。
「その代わり、俺が勝ったら、今度こそ友達な?」
舞台下手ギリギリに凪を追い詰め、勢い良く刀を抜いて振り下ろす!
が、抜いたのは刀ではなく、カラフルな羽のお花みたいなヤツ。
「何故、斬らぬ・・・・ッ!」うめく凪。
「斬ったよ、ココ(胸を指す)を。お前、死んだ!と思ったろ?なら、それで十分だ。無駄に血を流すことない」
あのね、これも、風助が嵐山に一太刀!って場面でやっぱり、抜いたのがお花の剣だったの。風助の思いは嵐山には伝わらなかったけれども、ね。

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「これで、友達決定、だな」と男。
「お前、なんで戦わないんだ?あれだけの腕だ、刀を抜けばそうとう強いのだろう」と問う凪に、
「やめたんだ、人を斬るの」と答える男。
俺も昔は、お前のように上を目指していろんな兵法を考えたりしてた。
でも、たくさん血を流して上り詰めても、しょせん、たどり着いた先はあの岩山みたいになんもないって気付いた。
俺、風のように生きたいんだ。
自由に、いろんなとこへ行って、人を笑顔にする風になる。
この黄金で、船を作って旅に出たいんだ、友達いっぱい乗っけてな。
お前も、俺と一緒に「風」にならないか?
大空を自由に駆け抜ける風に・・・・。

お前に見せたいものがある、と男が出したのは、
天井から降りてきた、大きな帆布。白地に“風”と書いてある。
「お前、ここで、これを一人で縫ってたのか?」
男、にこにこ。
「・・・・・暗いな」
「そんなこといったら、お前だって!
見える!お前の本当の姿が!〔細かいこと言えば、ここも風助さん風味なの)・・・・仕事終わって絵ぇ描いたり粘土こねくり回してる暗〜い姿が!」
ここからちょこっと、日替わりのアドリブでフリスタ関連の小ネタ。
ワタシ的には、無い方が好きかなー・・・ま、でも一般の舞台でもそういうことあるし、今回の量は許容範囲かと。
「お前だって、劇団解散してから友達一人もいねぇくせに!」
「ご心配なくぅーーー!友達ならいますぅーーー!ここに!」凪を指差す男。
指差した手を広げ、握手を求める男。
躊躇ったあと、おずおずと凪が手を差し出そうとした、その時。
悲鳴と共に、陽炎が洞穴に落っこちてくる。
慌てて、手をひっこめる凪。

帰り際、「お前、俺に名を訊いたな」と振り返る凪。
「俺の名は“凪”だ。俺の風は、あの日から止まったまんまだ。だから、風には、なれない」
これまで、誰に名前を訊かれても不動に付けられた名を認めようとしなかった凪が、初めて自分から、その名を名乗るの。
金山のことは、誰にも言わない、と約束して帰ろうとする凪に「また来いよ!今度は遊びに、な!」と声をかける男。
勢いにつられて片手を上げてニコッとしてしまい、我に帰ってそそくさと立ち去る凪。
「!・・・若が・・・・笑った・・・・」心底びっくりする陽炎。

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不動の回想シーン。
息子・不動の強さに恐怖を覚えた父は、息子を手にかけようとして返り討ちにあってしまう。
息子に夫を殺された不動の母は、嘆き悲しみ自害した。


りんの膝枕でうたた寝しながら、父を殺し母を亡くした日の悪夢にうなされる不動。
「ワシの子は、必ずワシを殺しに来る。ワシは、子はいらぬぞ」

そこへ、影村の声。
「神ノ岳で行方知れずになっていた凪が、帰ってまいりました!」

「神ノ岳で何を見た?」
「・・・何も・・・」
これまで冷徹非情でクールだった凪が、明らかに動揺を見せてるの。
男と出会い、忘れよう、捨てようしていた人間らしさが隠し切れなくなってきたのかな。
「命に代えてもか?!」
「・・・何も・・・」
「では、りんの命に代えてもか?!!」
迷い、苦しむ凪。

りんが、突然飛び出し、刀を自分の首にあてる。
「これ以上、兄上が苦しむのを見ておれません!ならば、いっそ!」
母の自害シーンと重なるりんの姿に動揺する不動。
止めようとしてもみあい、はずみでりんの腕を少し斬ってしまった凪に、不動の怒りが爆発する。
「貴様、よくも、ワシの大事なものを!!」
斬りあう不動と凪。
お前は泣き虫のままだ、と恫喝する不動に「俺は強くなった!」と刃向かう凪。
「命が惜しいか」と圧倒的に優位な不動に「目的を果たすまでは死ぬわけにはいかぬ!」と抵抗する。
ならば、川に囲まれた織田の砦をたったひとりで3日以内に堕とせたら許してやる、と命じられる。

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逡巡しながらも“あの男”に会うために神ノ岳にやってきた凪。
おなじみの突風と木の葉の仕掛けから、男が現れる。
「おかえりなさぁ〜いvご飯にする?それとも粘土?(ここはアドリブ)」牢の扉を開けてニコニコ出てくる男に「お前、俺が斬りに来るとは思わないのか!」と罪の意識からいらつく凪。
今度来るときには遊びにって約束したんだから、と信じてくれる男に、ついた嘘。
本当は織田の砦を崩す知恵を借りに来たのに、農地を拓くためだなんて。
男が教えてくれたのは「川をせき止めて雨を待ち、増水したところで一気に堤防を崩して押し流す」方法。
帰り際、いつかのいんちき占い師の口調で「良い田んぼや畑ができますように・・・!」と凪を信じきった男に、胸が痛む。
「すまん・・・」と呟いて足早に去る凪の胸は、もっともっと痛かったよね。


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降りしきる雨の中、土嚢を積み上げて川を堰止める陽炎と仁雷。
陽炎のために、ぼやきながらも働く仁雷、下流に織田の砦なんてあったかな、と呟いている。
若があるっていうんだから、あるのよ!手伝ってくれなんて頼んでないんだから、嫌ならいいのよっっ、なんて、仁雷にはとっても強気な陽炎。
そこへ凪もやってきて、堤防の出来と溜まってきた水量に喜んでいると、突然!武装した集団が襲い掛かる。
織田軍か!?と斬りかかろうとして、侍ではなく農民だと気付く凪。
「去れ!民百姓を斬るのは本意ではない!」と攻撃を避けながら必死で叫ぶが、
構わず斬りつけてくる農民に、身体が反射的に動いて斬り返してしまう。
斬ってしまった自分に動転しながらも、なおも戦いを避けようとするも、
武術の基本など知らぬ農民のがむしゃらでめちゃくちゃな斬りつけに、
陽炎が深手を負い、凪はとうとう最後の手段と、せき止めていた堤防を決壊させてしまう。
一気に流れ出す濁流は、もつれあう凪や農民たちも陽炎たちも飲み込み、下流の村を押し流していく。

命綱につかまって、かろうじて助かった凪に、傍らに残った農民が最期の息で言う。
「なんでおらたちの村を。おらたちが何をしたっていうんだ・・・」
織田の砦を崩そうとして、罪もないたくさんの民百姓たちを犠牲にしてしまった。
己の罪に、惑い、苦しむ凪。
水が、農民が、凪の心を攻め立ててがんじがらめにしていくイメージの舞い。
「ぅわ”あ”あ”あ”ぁーーーーーーーーー!!」
凪の絶叫。

幕。

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1幕、終わってもしばらく身体が硬直してて動けなかった。
右手で左の腕をぎゅーーつと掴んで息をつめてみてたから、
たっぷり30秒位して、ほぅ〜ってため息ついて天井を仰いで。
左腕んとこ、赤くなってた。
あとから思い返すとね、息が止まるくらいカッコイイ智さんがいっぱい浮かんできて、綺麗すぎてカッコよすぎて泣きそうになるんだけどね、
でも、劇場の中にいるときには、智さんじゃなくて凪、なの。
哀しいほどに自分を追い込んで、ギリギリのところで闘ってる凪が、切なくて苦しくて。
ラストの絶叫が、ずっとずっと心で渦を巻いてて、変な話、トイレに行くのももういいやって思っちゃうくらい。
休憩中、ずっと1幕の凪を思い出して過ごしてた。


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第2幕

緞帳が上がると、不動の屋敷内。
片方の肩を出した女たちが妖艶に踊り、男たちも酒を飲み、うかれて踊っている。
凪が、約束どおりたった3日で織田の砦を墜とした祝いの酒盛りだ。

宴のさなか、凪が帰還してくる。
「俺は今、モーレツに感動しているぅぅ〜〜!」凪の足にかじりつく影村。
(ちなみに、この台詞は、戦国のときに風助と雷蔵のやりとりを聞いていた竜巻が、男の友情に感動しちゃったときの台詞でもある。あん時には雷蔵役で感動されてた西ノ園さんが、今回は感動する方になってるのがね、また^^)
不動も出てきて成功をねぎらうが、凪の表情は沈痛なまま。
「いや、失敗にございます。押し流したのは砦だけはありませんでした」。
ところが、
「もとより、あそこに織田の砦などない」。
その村は、一揆の首謀者をかくまうと噂が合った村で、周辺へのみせしめとしてつぶしたかったのだ、と不動。

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騙されたことへの怒り、自分の罪への自責の念、やりきれなさと、悔しさと・・・・いろんな感情に押しつぶされそうになって、表情をなくしてたたずむ凪。
「山城の連中は、いい酒呑んでるなぁ〜・・・・」
だれもいなくなった宴の後から、やおらお面を外して起き上がったのは、あの男。
「すごいな、お前。たった3日で織田の砦を墜としたってな」。
「・・・あぁ。おまえのおかげだ・・・・」力なく顔を背ける凪。
バカヤロウ!ふざけるな! 哀しい怒りをぶつける男。
そこへ、舞台中央の階段からひょっこりと仁雷が顔を出す。
陽炎の伝言を伝えに来た、と。声に、怒りが滲んでる。
あの日、深手を負った陽炎だが「やっと目を覚ましたよ!一人じゃまだなんにもできないけどよ!」
陽炎の伝言は『私は大丈夫だから、若は何も気にしないで』
「俺が、あいつの手足になる!だからおめぇは一人でてめぇの道とやらを行け!」
どこまでもけなげな陽炎と、そんな陽炎に全部まるごと惚れてる仁雷の男気に、泣けちゃうよ。

「俺を仇と狙っていたな。俺を討つなら、今だぞ・・・」力なく言う凪に
「今のおめぇは、殺す値打ちもねぇ!」言い捨てて去っていく仁雷。
男も、また、去っていく。

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イメージの中、灰色の布を纏い、笠を被った人たちが静かに凪を取り囲む。
「お前には、何がわかる」笠をとる仁雷。
「貴方には、何が見える」陽炎。
「お前には、何が聞こえる」男。
「貴方には、何ができる」りん。
鳴り響く、木魚の音と鐘の音。弔いの列。

「お前には、何も出来ない!」壇上から、不動。
キッと顔を上げた凪は、舞台中央の縁に隠してあった鉄砲を掴んで、叫びながら不動を撃つ。
  ーーーー暗転ーーーーー

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神ノ岳。
仁雷と、おんぶされた陽炎の姿。
相変わらずのやりとりで憎まれ口をたたきながらも、心を許しあってるのが見て取れる二人。
だいたい、どうしてあんな冷たい男のためにそんなにしてまで・・・と文句をいう仁雷に、
若は、本当は笑顔を絶やさない優しい人なの!と猛然と抗議する陽炎。
「あんなことがなければ、若は、やさしい若のままでいられたのに・・・」
7年前。
凪は谷村家の子息で、陽炎の父は谷村に仕えていた。
ある日、娘のりんを嫁にほしいと山城不動が言ってきた。
それを拒むと、不動は“虫”と呼ばれる賊を使って谷村の家に夜襲をかけ、凪の親や陽炎の父を殺した。
幼かった陽炎を逃がしてくれた若は、妹・りんを守って最後まで戦ったが力及ばず、
りんは攫われ、不動は若に戯れに凪と名づけ、配下に置いた。
悔しかったら、這い上がってきてワシを倒しりんを取り戻してみるがよい、と。
その日から、若は、笑わなくなった。
りんを取り戻すために、修羅の道を選んだのだと。
「だから!今度は私が、若を助ける番なの!」

このとき、舞台手前に陽炎と仁雷が立ってて、シルクスクリーンみたいなのの後ろ側で、りんを庇いながら“虫”と必死で戦う凪がスローモーションで殺陣をしてるの。
桃太郎さんみたいな袖なしのちゃんちゃんこみたいなの着て(って書いたら、なんかすごく変なんだけど、でも、日本一って書いてある桃太郎さんの四角っぽいヤツみたいなの。裃じゃないしなー名前、なんだっけ;;;)頭に白いハチマキ巻いてて、ふっくり初々しい感じなの^^泣き喚きながら、下手な太刀裁きで、一生懸命戦ってるの・・・・。


そこへ、例の(!)突風と木の葉。
「この流れは・・・・・」そう、あっという間に牢の中へ(笑)
「なんだ、お前らか・・・」と男、登場
凪を知らないか、と必死で訊ねる陽炎。
母の命日だけは不動が影武者を使わないことを知っていた凪は、法要の参列の不動に向かって鉄砲を撃ったが失敗、それから行方がわからないのだと。
悔しいけど、私じゃダメだから、あのとき、若が笑顔を見せたアンタだったら、若を助けられるんじゃないかって!
悲痛な陽炎の願いも、男には通じない。
そんな男に、今度は仁雷が「あいつは“あの日”から、変わっちまったんだとよ!」と顛末を聞かせる。
その話を聞いた途端、表情が曇る男。

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舞台奥、壇上に、張りつけられ、ぐったりとした凪。
不動に捕えられ、まさに鉄砲隊が凪に向かって引き金を引こうとしたとき、仁雷と陽炎が助けにやってくる。
陽炎が不動の配下をひきつけて戦う間に、凪の手械を外して助け出す仁雷。
「アンタ、なんで俺のことを・・・」
「お前が死ぬと、嫁が悲しむ!」「嫁になった覚えはなーい!」
3人を取り囲むのは影村率いる不動軍。
「やはり仲間だったのか。助けに来るのも計算のうち、3人纏めて斬り捨てろ!」

このピンチに、突風と共に男が登場。
りんを人質に窮地を救う作戦だ。
「お前、なんで・・・」と絶句する凪に
「お前こそ、なんであの山のことを黙ってた?金山のことを不動に知らせていればこんなことにはならなかっただろうに」と問う男。
「お前を、二度も裏切りたくなかった」答える凪。
ひとあし先に、いつかの帆布を凧にしてりんを連れて神ノ岳に飛び去る男。
(この帆布の凧がねー、人形だとまるわかりの二人をくっつけてシューッって上手から下手へ飛んでくのがねー、ちょっとも少し本物っぽくなんなかったのかなーってね、ま、残念な感じでは、あるのよ;;;)

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追われながら神ノ岳を目指して走る凪・陽炎・仁雷。
でも、わき腹に負った傷が治りきっていない陽炎は、これ以上走れそうにない。
抱えようとした凪の手を振り払って、私はいいから、若は行って!と叫ぶように懇願する陽炎。
この先もまた、人を斬るのですか、
若が、今、おりんさまを助けなければ、これまで若の手にかかって死んでいった者たちが浮かばれません、と。
凪の目、涙がいっぱいでキラキラ光ってて、でも、陽炎を見る横顔がね、苦しくて切なくて、愛しくて、でも・・・っていろんな想いが滲んでる大人の男の表情でね。
搾り出すように請う陽炎の想いを受け止める凪。
後ろから右手で頭を抱きこんで、左手で肩を抱き、頭に頬を寄せて
「追っ手に見つからぬよう、じっとしていろ」と。
ありったけの想いを込めて、言うの。
正面を向いてその言葉を聞いてた陽炎が、たまらなくなって顔をゆがめるのね、長い間の祈りと想いがやっと報われて、でも・・・って。ほんとに万感迫る表情で、もう、まりかちゃん、すごいの。
でもね、向き直って凪を見つめた陽炎は、また、気丈に言うの。
「誰に向かって言っているのです、私は、忍びですよ!」
この陽炎に、もう号泣。
自分の身よりも若が大切で、
志を遂げようとする若の邪魔になるものは、どんなものでも渾身で排除する、たとえそれが自分自身であっても・・・・そんな陽炎の想いの深さに、泣けて泣けてしょうがなかった。
見つめる凪の目から、ぽろりと涙が転がり落ちて、でも、気持ちを断ち切るように走り出すの。

若を見送った陽炎は、今度は仁雷に叫ぶ。
「何をしているの!あんたも早く行きなさい!若を神ノ岳へ連れて行って!」
若を無事に送り届けたら、夫婦になってあげるからさ・・・だから、早く、と泣きながら訴える陽炎に、仁雷も応える。
「帰ってきたら、二人で祝言あげような。花火みたいに派手なヤツ・・・だから死ぬんじゃねぇぞ!!」
仁雷が走り去るのを見届けた陽炎。
「・・・お願い!!」喉が千切れんばかりの叫び。

不動軍の追っ手がやってくる。
「凪はどこだ!?」
相手を見据えてゆらり、と立ち上がる陽炎。
「凪なんて、知らないわ・・・・私の若は、凪なんて名前じゃない!」
気力を振り絞って戦うも傷を負っている陽炎が侍たちに敵うわけもなく、追い詰められる。そこへ、
「花婿、参上!!」帰ってきた仁雷。
「なんで帰ってきたの?! 若は?!!」
「アイツなら、一人でもちゃんと神ノ岳へたどり着くさ。それより、おめぇには手足が必要だ!」
「なんで女房の言うことが聞けないの!?」
「俺は、亭主関白だぁぁーーー!」猛然と敵に立ち向かう仁雷。
自分も戦いつつも、陽炎に襲い掛かる兵士がいれば、必ず守りにいくの。
仁雷、すっごく!めちゃめちゃ!泣きそうにカッコイイぞーーーーー!
でも、仁雷、陽炎を庇ってやられちゃうの。
「アンタの作った握り飯、もう一回食べたかったなぁ・・・・」って言い残して。
仁雷に泣きすがってた陽炎が、立ち上がる。
「よくも、よくも私の亭主を・・・・!」
仁雷のために、戦って、戦って。
だけど、めった刺しにされちゃう。最期に花火の玉を手に、花火と一緒に散ってくの。
二人の祝言の花火。死出を飾る花火。
スローモーションでやられる陽炎を背景にスローモーもションで神ノ岳に向かって走り続ける凪。
腰を落して、森を掻き分け、走り続ける。
スローモーションなのに、本当に疾走しているのをハイスピードカメラで撮影したみたいなの。
夜空に開く花火に、陽炎と仁雷の最期を悟る凪。

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神ノ岳には、りんと男。
「悪かったな、突然攫って。俺はお前の兄貴の友達だ」
なぜ、と訊ねるりんに、昔の罪滅ぼしのためかな、と男。
「谷村の姫さんも大きくなったもんだな。昔、担いだときは俺より小さかったのに」

視線を彷徨わせ、必死で記憶をたどるりん。

そこへ、凪がやってくる。
陽炎と仁雷のは?と訊かれ「あの二人は、ここには、来ない」。苦しそうな凪。
「すまなかったな、あの二人を助けられなくて・・・」という男に、
「俺のほうこそ、すまなかった。海に、出られなくなった・・・」と凪。
凧にしたために、男が航海を夢見て縫っていた帆が台無しになってしまったことをわびる。

そんな二人に、全てを思い出したりんが叫ぶ。
「騙されないで兄上!その男は、私たちの仇です!」。
7年前のあの日、谷村の家を襲い両親を殺してりんを奪い、凪を不動に引き渡したのは。
凪の風を止めたのは、この男だった。

そこへ不動、登場。
「久しぶりだな、7年ぶりか」
男の名は『虱(しらみ)』。不動の子飼いだった『虫』の一人。
手にした帆布を引き裂く不動。
『風』と書かれていたその文字は、破られて『ノ』と『虱』に分かれる。
虱は、あとちょっとが足りなくて風になりそこねた男だってことを、その文字で象徴してるんだよね。
さんざんいいように利用して、用が済むと“虫けらのように”虱たちを切り捨てた不動を、虱もまた、恨んでいた。
不動に斬りかかる凪に、こいつには正攻法は通用しないから何か作戦を!と叫ぶ虱だが、凪は聞き入れない。
「不動は俺一人で倒す!お前との事はその後だ!」
この7年、不動を討つことだけを考えて生きてきた凪。
だが、凪に剣術を教えたのは不動なのだから、敵うはずはない。
凪の盾になって、不動に刺される虱。
「あの日」の、せめてもの罪滅ぼしに。
「この山、お前にやるよ」と凪に言い遺して、死んでいく虱。

りんを庇いながら不動と対峙する凪に、不動が呼びかける。
「ワシの命を狙うお前をずと傍に置いていたのは、お前の力がワシの力になると思っていたから。
望みどおり、りんはおまえに返してやる。
これからワシと二人で、りんを守りながら天下を目指さぬか」
刀を置き、手を広げる不動。
凪も、不動に近づいて・・・・素早く刀を手に取り、斬りかかる。
ついに!と思ったが、不動は着物の下に鎖帷子(くさりかたびら)を着けていた。
「騙したのか!?」
「さっき言ったことは、本当だ。だが、これは、お前を生かす最後の賭けだったのだ」
不動の怒りが爆発する。

再び、凪と不動の闘い。刀を落した凪。
「武器もなしに、ワシに勝てるわけがないだろう」
「武器なら、ここにある!」
刃を避けながら、不動にむしゃぶりつく凪。
そのまま二人して洞穴の湖に転がり落ちる。

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水の中では、鎖帷子を身につけた不動はうまく動けない。
それが凪の作戦。
「ワシは、こんな戦い方をお前に教えた覚えはない」
「教えてくれたのは、俺の“友達”だ!」
凪が、仇である虱を友達だって言うのが、虱の考え方が凪にバトンタッチされてるのがね、なんかグッとくるよね。
 
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湖から上がってた二人。
空には明るい月、そして、湖面にくっきりと映る、月。
『山に、月二つ』・・・・不動の最期の時。

ところが。
「お前に、ワシを殺すことはできない」と不動。
不動の身体は核の病に蝕まれ、もう胃がすっかり腐っているのだと。
獅子身中の虫とは、良う言ったもの、さすがのワシも身体を食い荒らす虫には勝てなかった」
「友を裏切り、慕う部下を犠牲にして、お前は本当に強くなった。
お前は、本当に、ワシにそっくりじゃ・・・・」
駆け寄った凪の腕の中で、息絶える不動。

えぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!?
不動、胃がんで死ぬのぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜!!??
あまりの衝撃SHOCKに、心中、ぼーぜんとする私。
はっっ!
気を取り直して、舞台に集中しなくっちゃっっっ(焦)

「死ぬな!お前は!お前は俺がーーーーーッッ!!」
取り乱し、泣き叫ぶ凪。
不動を討つことだけが全てだった7年間。
そのために、たくさんの血を流してきた。
本意ではないが、それも全て不動の位置まで登りつめるためだったのに。
自分の手で、決着を付けられないなら、この7年は何だったのか。
不動を討つ、という凪の目的のために犠牲になった陽炎や仁雷、虱の死は何のためだったのか。

何度挑んでも、ずっと敵わなかった相手。
だからこそ、もっともっと、と強くなれた。
憎んで憎んで、憎み通していく間に、いつのまにか心の中で大きい存在になっていたのだろうな。
憎しみって、歪んだ愛情と背中合わせなのかもしれないね。


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たたずむりんの傍らで、呆然とへたりこむ凪。
全て、終わった。
たくさんの命を犠牲にしてきたのに、結局自分は何もできなかった、そんな喪失感いっぱいの顔してるの。
「お前を自由にしてやれたことだけが、唯一の救いだ・・・・」力なく呟く凪。


ところが。
「バカな兄上」
りんの口から、思いもよらぬ言葉が。
「不動の言ったことは本当です。あの方は、本当に兄上をこの国の後継者にと考えていました」
どこからか、影村も現れる。
自ら父を手にかけたことがトラウマで(とはいわないけど、まぁ、そんなニュアンス)決して子は作らず、自分に良く似た男を後継者とすべくずっと探していたのだと。
そして、凪に目をつけた不動は、自分を狙うために強くなるよう、彼一流のやり方で凪を育てたのだと。
「俺は、お前を助けるために!」
「私とて、兄上をお待ち申しておりました。でも、村を流して嘆く兄上を見て悟りました、この人には、何も出来ぬと。この7年、兄上は何もできなかった。できたのはこの金山を見つけたことくらい」


りんは、神ノ岳の秘密に気付いていた。
あの、わらべ唄、

右の申(さる)、左(さ)に示し
右に「申」、左側に示編を持つ漢字は「神」、つまり神ノ岳を指し、
頂 すべって 蓋の穴
は、この地下金鉱に続く抜け穴を意味する。
そして、
鏡に映る黄金虫
は、湖に映る金塊を表しているのです!

興奮に目を輝かせて話し続ける、りん。
「私は、不動の首とこの国を土産に、織田の下に参ります」
「影村、この金山のことは他言無用です、もちろん、信長にも」

7年の間に、したたかな野心家になっちゃってたりん。
女って怖いってこと?
不動の下で暮らすうちに、お金と権力さえあれば自由を手に入れられるって思い始めたのかもなぁ。
お話がわかった上で観た30日、りんが「神の棲む山・・・・」って言い残して去っていく場面で、後ろを向く、その、ほんの一瞬、りんが唇の端をフッと微かに上げて妖艶に笑うのに気付いて、うわーーーーー!って、鳥肌立っちゃった。こん時には既に、心の中じゃ可憐な妹じゃなくなってたのかよー!みたいな。


自分の手で不動を討てなかったばかりか、
りんを救いだすために費やしてきた7年は、いったい・・・・。
何も映さなくなった瞳で、座り込んだまま、小さく歌いだす凪。

右の申 左に示
頂 すべって 蓋の穴
鏡に映る黄金虫
仏の昼寝(碑舟?)に天つ風 吹く
仏の昼寝(碑舟?)に天つ風 吹く
静かな、静かな声なの。
PZ2001のKAREのたどたどしい歌声でもなく、
TRUE WESTのオースティンの鼻歌でもない、初めて聴く智さんの声。
哀しくて、弱々しい声なの。
でもね、全然掠れたり息漏れしないの。
会場中が息を殺して聴いてる中、スーッと沁みて広がっていく歌声だった。
ずっとずっと、聴いていたいな。
この声、ずっと忘れたくないな。



そこへ、織田軍が押し寄せてくる。
金山の噂を聞きつけて裏切ったのか。
影村率いる不動軍と織田軍の激しい戦い。その中で立ち尽くす凪。
「凪!何をしている!?おりんさまを守ってお前も戦え!」叫ぶ影村。
動かぬ凪に業を煮やし「えーい!凪も一緒に切り捨てろ!」
騒然となる洞穴内に、徐々に怒りがこみ上げる凪。

「ここは・・・ここは俺が貰った山だ・・・・ッ!」
虱が凪にくれた大切な場所を、踏みにじるヤツは許せない。
めらめらと炎が立ち上るみたいな、激しい殺陣。
蛮風で、近藤さんと土方さんを殺された時の「ここは、俺たちが生きる場所だ!」って激しく斬り込んでいく総司の姿と、ダブる場面。

「お前らに、この唄の“本当の意味”を教えてやる!」
岩を駆け上がり、仏像を力任せに倒す凪。
轟音とともに激しい風が吹き荒れ、山が崩れ落ちる。


あの唄の意味、
「神ノ岳」と「鏡に映る黄金虫」のくだりは、りんが言ったとおりだけど、
「頂 滑って蓋の穴」は、抜け道ではなくて、
神ノ岳の洞穴の蓋になってる頂上部分が滑って崩落するってこと。
「仏の昼寝(碑舟)に」は、
1幕で虱が言ってたサルみたいな仏像を昼寝させる=横に倒す、或いは仏像の碑を、舟のように湖面に浮かべる・・・・どっちにしても、仏像を倒すと、って意味で、
そうすると、「天つ風吹く」、つまり、神風が吹き荒れて山が崩れ洞穴を埋めてしまうってことじゃないかと、私は解釈したんだけど・・・・どうだろ。


織田軍も影村はじめ不動軍も、そして隠し金山も。
すべてを埋めてしまった激しい土埃がおさまり、何もないところに残されたりんと凪。
山が崩れて埋まってしまった金山に取り乱すりん。
「何をしているのです、兄上!さあ、立って!早く金を掘り出さなければ!」
「あの金で、兄上と私で、新しい国を作りましょう!」
「二人でダメなら、人を雇って掘り出せばいい、金ならここにたくさんあるのだから!」
狂気じみた目でまくしたてるりんを、哀しく見ている凪。
登りきった山の頂は、岩だらけで何もない、そう虱が言っていたとおり、
友を失い、慕ってくれた部下を犠牲にした先にあったのは、こんなにも、虚しい風景。



ゆっくりと立ち上がり、ふらふらと歩を進めると、
振り向いて、剣先をりんにビシッと向ける。
「俺が、人を斬るのは、これが最後」
驚くりんに、剣を振り下ろす。
空をきった刀が斬ったのは「兄弟の縁」。

「お前は、もう、自由だ」

「もう、こんなものはいらない、俺には、これが、あればいい」
刀を捨て、友達の名前(風が破れて虱になった文字)が書かれた帆布を首に巻く凪。

静かに流れてくるBGMに、もう、ダダ泣き。
だって、これ、戦国風のテーマ曲なんだもん。
めざましどようびでゲネの映像を見たとき、エンタマ7の○の中の凪が風助さんみたいって思ったのは、正解だったんだね。
「俺は、風になる。空は、こんなにも、広い」
いつか、山頂で虱に言ったように、登りきった山の、その上には綺麗な空が広がっているのだから。
空を見上げる凪は、もう、風助の顔になってた。

            【2007年の今日はこんな日でした】