「舟を編む」(ネタばれなし)

金曜レディスデー…とはいえ、ちょっと身体もだるいし雨なんでバス代使っていったらあんま意味無くね?と思いながらも、まぁ、他に用事も2〜3あったので、えーい!ってことで。
うん、観れて良かった^^
連休中にNHKのBSでやっていた「ケンボー先生と山田先生」を観ていたので、よけいに。

ちなみに、「ケンボー先生〜」は、三省堂から出ている2つの国語辞典(三省堂国語辞典と、新明解国語辞典)の、それぞれの編者のドキュメンタリー。ナビゲータ―は薬師丸ひろ子
もともと、辞書の編纂を任された見坊先生が、大学の友人で2つ年下の山田先生にお手伝いを頼んだのがきっかけだった。その後、方向性の違いにより袂を分かち、1つの会社から毛色の異なる2つの辞書が出版されることになった背景と、その2人の人となりを追った番組だったの。
言葉バカというか、とにかく言葉に魅せられた見坊先生は言葉集め(用例採集)に夢中になりすぎて、いっこうに次の段階に進めない。 そこで、会社につつかれて山田先生が単独で辞書を創ってしまう。その前文にあった「見坊に事故あり…」という経緯説明の1文の「事故」という言葉の解釈認識が書き手の山田先生と、目にした見坊先生では違っていたことが誤解を生み、亀裂が生じてしまう・・・言葉を仕事にしてた二人が、言葉で心が離れてしまうのが皮肉だよね。
二人の確執は、それぞれの辞書の「用例」の中に感じることができて。
『山田といえ、もう何年も会わないな』(@三国)
『助手の立場に甘んじること実に17年』(@新明解)
などなど・・・。
そして、それも、月日が流れて辞書が改訂を重ねるたびに、少しずつ変わっていく・・・。
私の辞書は実家にあったのをそのまま嫁に持ってきた「新明解」の3版で、たしかに用例がユニークなのでそこは気に入ってたけど(タモさんの番組で新明解がおもしろいってやってて、自分の辞書を見てみたらたまたまソレだった)
辞書なんて、どれもあんま変わらないと思ってた。
前文だとか、編纂者なんて、あんま気にしたことなかった。
そこに、こんな情熱とドラマがあったなんて知らなかった。

そんな、番組を観てから臨んだ「舟を編む」は、とてもすとんと心に落ちてきてきれいに収まった。
とにかく真面目で不器用なマジメくん(馬締って名字なの)(松田龍平)が、辞書編纂っていう自分の居場所を見つけて少しずつイイ顔になっていく様子。
彼と接することで、辞書編纂とちゃんと向き合う事で、変わっていく人たち。
自分も仕事(板前)と真摯に向き合いながらも、そっと支えてくれる奥さん(かぐやさんって名前なの、下宿先の竹おばちゃんの姪っ子だからネ)(宮崎あおい)(この役柄って、神カルのハルさんともちょっと似てるんだけど、ハルさんの方がもっとやわらかいイメージかな)
個人的には、こんなオダジョーが見たかった!って嬉しかったの。ちょっとチャラくてダメダメでダサいんだけど、彼なりに優しくて、彼なりに辞書編纂に愛情を持ってて、ずっと先まで彼なりの立ち位置で支えている西岡くん。すごく良かった!

「言葉」という大海原は、想像以上に広くて大きくて、丁寧に拾い上げて1語1語に心を注いで解釈をつけていく作業は何年も十年以上もの時間が必要で。
でも、やっとできあがったと思ったら、もうすでに新しい言葉が生まれていて、新しい解釈が広がり始めている。
だから、できあがったその時から、次の改訂作業が始まる。ずっと、ずっと、終わらない。
辞書をひく指の感触や、調べようとした言葉に辿りつくまでにふと目についた別の言葉との出会い・・・狙った言葉にピンポイントですぐに着地できる電子辞書では味わえない余計な部分が、なんだか心を豊かにしてくれるような気もする。
たくさんの時間と、情熱が、辞書には込められてるんだなーって。辞書って、いいなーって。
ゆっくりした時間のなかで、心に少しだけ…紙1片くらい?…厚みができたみたいな気持ちになれる作品だったな^^
【2012年の今日はこんな日でした】